<Anifaアニファ 2006年6月号>
動物と自然を大切にするオーストラリアの人々
オーストラリアのペット事情
オーストラリア人のペット好きは世界的に知られている。最近の調査では、750万世帯のおよそ64%が何らかのペットを飼っていると答えた。オーストラリアのペットは犬や猫だけではなく、犬や猫を飼っているのは、全体の54%という結果が出た。そのほかは、魚や鳥、うさぎやねずみ、爬虫類も多く飼われている。ペットを飼っているのは、家族だけでなく、一人暮らしの人たちにも多い。一人暮らしをしている人々の15%は猫を、20%は犬を飼っているという調査もある。しかし、日本人にあまり知られていないことがある。それは、オーストラリアでは、日本や欧米のように都会のマンションでは動物が飼えないことが多いことだ。マンションのほとんどは一戸ずつオーナーがいて、そのオーナーたちが作る組合規約があるために飼うことができないのである。動物可のマンションは、各都市にひとつふたつあるものの、その数は日本の比ではない。欧米に比べたらもしかして限りなくゼロに近いかも知れない。
デラックスなペットホテル
オーストラリアの人々にとっての犬は、もともとワーキングドッグだったから、ペットというより、家族であり、仕事仲間であったと言える。街中に小型の犬たちを見かけるようになったのは、実に最近のことである。女性が仕事に出始めて、家で留守をさせているケースが増えたことや、同性愛者、つまりゲイのカップルが増えて彼らが子供の代替として小型犬を好むことが多いこと。もちろん、オーストラリア自体が都会化して、ファッショナブルな犬を求めるようになったことなどがその理由に挙げられるかも知れない。
その傾向に呼応して、オーストラリアでは今、動物関連の新しいビジネスが、どんどん増えてきた。最も顕著なのは、デラックスなボーディングケネル、つまり日本で言うペットホテル。オーストラリア人の年間の有給休暇は4週間で、長期ホリデーは一般的である。したがって、その際に、犬や猫を安心して預けることのできる場所はオーストラリア人の生活に必要不可欠だ。ボーディングケネル自体はオーストラリアに数多く存在していたのだが、このケネルが、最近軒並みデラックスになってきた。
シングルベッドのある部屋にTVと特別の庭がついた5スターホテルは常に満員である。普通のボーディングにも、毎日のエキササイズタイムには、必ずケアラーがついて、一緒に遊んでくれる。別料金にはなるが、一対一で散歩もしてくれる。グルメフードやダイエットフードもOKというきめ細かなサービス。ボーディングと言えば犬だけではなく、猫のボーディングもある。キャトリーと呼ばれる猫専用のホテルは、個人部屋(?)だけでなく、猫たちが遊ぶことができるエキササイズ用の庭もついている。
ボーディングケネルでは最近、仕付けトレーニングをするところも増えてきた。ホリデーに行っている間専門のドッグトレーナーが、飼い主の希望に応じてトレーニングをする。なかなか仕付け教室に行けない、忙しい人にとっては実に便利なサービス。また、幼稚園のようなサービスの、ドッグデイケアセンターも増えてきた。メルボルンでドッグウオーキングのビジネスを立ち上げている日本人のご夫妻がいるが、ドッグウオーキングを請け負っているうちに、預かっている犬たちの家のクリーニングサービスも頼まれて、今はそのクリーニング業とドッグウオーキング業で大繁盛と聞いた。
身近な野生動物
オーストラリアは、世界でもとりわけ自然環境を大切にする国なので、野生の動物が多い。しかし、野生の動物は飼っていいものと飼ってはいけないものがある。また飼ってもいいけれどもライセンスが必要なものもある。オーストラリアでは都会でも多くの鳥が見られる。中でも、色とりどりのインコやオウムの種類が多い。
ベランダや庭に餌を置いておくと、時々そのインコの類がやってきて目をなごませてくれる。これは鳥かごに入れておくわけではないからペットとは言えないかも知れないが、オーストラリアではこうして野生の動物と楽しんでいる人たちがたくさんいる。私もその一人。クッカバラと呼ばれるワライカワセミなども、生肉を投げてやると、その時間に窓際にやってきて、窓を開けるのが遅かったりすると窓を叩いて催促したりするものもいるほど。
オーストラリアの鳥たちは、外国人たちにも人気があり、非常に高く売れるので、密輸されているものもある。先日はオーストラリアの珍しい鳥の卵を密輸しようとした日本人が二人捕まった。日本のペットショップで売っているオーストラリアのオウムやインコの類は、まんまと密輸に成功してアメリカなどで繁殖されたものが多い。
オーストラリアには爬虫類もたくさんいる。トカゲの類も多く、青い舌を持っているためにブルータングリザードと呼ばれいるかなり大きなトカゲは一般の家の庭にいて、ほぼペット代わり。しかし、法律では、野生の爬虫類を飼ってはいけないことになっていて、ライセンスを持っている爬虫類取り扱い業者からしか買うことができない。オーストラリアといえばカンガルーだろうか。最近の旱魃で、オーストラリアではカンガルーの数が増えた。したがって、不思議に思われるかも知れないが、頭数制限をしたり、食肉用として売ってもいいことになっても、カンガルーをペットとして飼うことは許されていない。
カンガルーは生きるためには自然の草を食べたりする特別の環境が必要で、ペットとしては飼えば動物虐待につながるというのがその理由である。例えば、最近こんなことがあった。母親が死んでしまった子供のカンガルーを自宅で飼っているのを、飼っている家の近所の人が察とナチュラル・ワイルドライフ&パーク・サービス(NPWS自然野生&公園局)に通報し、飼い主は罰金を科せられ子供のカンガルーはその家から連れ去られてしまった。
怪我をした野生の動物を見つけたら、まずはこのNPSWに報告をしなければならない。NPSWは、怪我をした動物が元気になるまで自宅に預かりケアをするボランティアを組織している。ただし、ボランティアは一時的に預かりケアをするもので、元気になったら、動物たちを野生に戻さなければならない。
厳しいペットの規則
野生の動物といえば、その野生動物たちを守るために猫をペットにしている人たちは、PWWSから次のような指導をされている。まず、猫はできるだけ家の中、あるいは敷地の中だけで飼うこと。特に、夜は猫を外に出さないようにと強く指導している。そのためには、子猫のころから室内にいるように仕付けをすることが必要だから、しつけ用の器具や本などが猫の飼い主たちに売れている。
先ほど述べたように、ボーディングキャトリーがあるのは、飼い主の旅行中にケアをする意味だけではなく、留守中に野生の動物などを殺さないように室内に預けておくという意味でもある。このようなルールがあるのは恐らくオーストラリアぐらいかも知れない。犬と国立公園内を歩くのも禁止されている場所もあり、乗馬を禁止した国立公園もある。糞などが自然環境に害を与えるからなのだそうだが行き過ぎだとの声もないわけではない。
オーストラリアのペットに対する規則は、日本の人々から見れば、あまりにも厳しすぎるように思えるかも知れない。しかし、オーストラリア人が最優先するのは自然保護、自然の生態系を守ることである。だから、そのためなら、彼らは多少の不便を我慢しようと思っている節がある。 |